第20回 福本 ヒデさん お笑い芸人
世界遺産は「素晴らしい」「美しい」だけじゃない「学ぶ」「考える」で新たな魅力を発見
―― 社会風刺コント集団「ザ・ニュースペーパー」の福本 ヒデさんは、2014年に世界遺産検定に挑戦され、3級に認定されました。持ちネタのひとつである「安倍シンゾウ」としてもインタビューにご協力いただけることになりました。世界遺産検定に挑戦されたきっかけや受検の感想をお聞かせください。
「安倍シンゾウ」としてお答えすると「え~、日本と世界をよく知るためにですねぇ」(笑)。
実際は歴史や美術が好きだからです。美術検定にも挑戦したことがあります。美術検定を通して美術には建築や建造物にも深く関わっていることを知って、寺院とか建造物への関心が膨らんできた折、知り合いから世界遺産検定のことを教えてもらいました。これは興味関心のど真ん中じゃないかと思って挑戦を決めました。テキストを読み込んで模擬試験も受けましたが、勉強はもちろん、受検自体もものすごく楽しかった!というのも、コントには「こうやったら絶対ウケる」という正解がないんです。だから「正解があって、それがわかっていれば問題が解ける」という体験が、もはや快感でした。
3級に挑戦したのは、2級の受検時間がモロに公演の真っ最中だったから(笑)。偶然にも公演会場と受検会場が近くて、今まで内緒にしていたんですが、メンバーには「忘れ物を取りに行く」と言って抜け出して3級を受けました(笑)。
―― 世界遺産を学んで、新しい発見はありましたか?検定の勉強を通じて行ってみたいと世界遺産はありましたか?
新しい発見だらけです。まず、知っているつもりでいた日本の世界遺産。「屋久島」や「知床」「小笠原諸島」などの自然遺産が、単に「雄大で手付かずの自然」といったことではなく、生物の生態系とか、地質学の観点からとか、“遺すべき意義”があることを知りました。文化遺産についても発見だらけ。たとえば石見銀山遺跡。出身地の広島から近いといえば近いですが、正直そんなに注目していなかったんです(笑)。でも最盛期は世界のトップクラスの銀の産出量を誇っていたと知り改めて見直しました(笑)。
国内外に関わらず遺産の背景を知っていると、写真で見るにしても、現地に行くにしても、より楽しめるんですよね。勉強をする以前に、ボロブドゥール遺跡(インドネシア共和国)や海印寺大蔵経板殿(韓国)に行ったことがあるのですが、それぞれがもつ歴史的・宗教的背景を知っていたら、もっと楽しめただろうなと思いましたね。また広島出身ということもあって「原爆ドーム」から「負の遺産」の存在も初めて知り、人間の素晴らしさだけではなく、愚かさが生んだ「負の歴史」「負の記憶」も遺していくことの意義についても深く考えさせられました。
行ってみたい世界遺産はもういっぱいあります!国内では沖縄に行く予定があるのですが「琉球王国のグスク及び関連遺産群」は、ぜひ訪ねたい。青い海だけじゃない沖縄の魅力に出会えるんではないかと、楽しみにしています。海外ではロシアの遺産にも興味があるし、厳かなイメージの日本の仏像とは違う仏教文化に出会えそうなスコータイと周辺の歴史公園(タイ王国)にも行ってみたいです。
―― 世界遺産の知識は「ザ・ニュースペーパー」のコントのお仕事と関わりがあると思いますか?
私の検定挑戦とは関係ないのですがザ・ニュースペーパーでは富士山が世界遺産に登録された時、それをテーマにしたコントをやったんですよ。メンバーが富士山、三保の松原 、鎌倉の大仏に扮してね(笑)。その時単に「世界遺産になってよかった」ではなく、登録されたことで観光客が急激に増加することによって起こる問題とかを盛りこんだんです。世界遺産は、さまざまな形でニュースになりますから、時事ネタを扱っている仕事とも関わりが出てくると思うし、僕たちは「風刺」という立ち位置なので、一面的な見方ではなく、別の方向からモノを見ることも求められます。その意味で、世界遺産の美しさや素晴らしさだけではなく、背景を知るという検定の学びは活かされるように思います。
今後は安倍シンゾウが首相である間に、首相として(笑)、まず2級に挑戦します!いやいや、福本としてはできるだけ早く挑戦したくてたまらない気持ちなんです。もちろん、できれば上の級も。また安倍シンゾウとしては、わが故郷である「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」の2015年登録をぜひとも実現したい!それまでは、何がなんでも、今の地位を守ります!(笑)。
(2014年4月)
プロフィール
福本 ヒデ(福本 ヒデ)さん