第26回 瀬戸 カトリーヌさん

第27回 瀬戸カトリーヌさん

「世界遺産が好き!」という思いが支えた1級合格

第26回 瀬戸 カトリーヌさん 女優・タレント

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3度目の挑戦で1級に合格した時はうれしくて泣きました

―― 女優、タレントとしてキャリアを磨き続ける一方、「世界ふしぎ発見!」(TBS系列)のミステリーハンターとしても活躍中の瀬戸カトリーヌさん。2019年2月に見事1級に合格されました。

 ポストにハガキではなく封筒が入っていたんです。「ええ~っ!?」って思って、パンパンパンパン……と封筒を叩きました。硬い物(合格カード)が入っている感触を確かめた時は、オーディションに合格した時のような大感動でした。うれしくて泣きました。(※合格通知は封筒で、不合格通知はハガキで届く)

―― 瀬戸カトリーヌさんが世界遺産検定に興味を持たれたきっかけは何ですか?

 長年「世界ふしぎ発見!」のレポーターをさせていただいていますが、新人の頃は正確にレポートする、面白く話す、クイズを出す、それだけに一生懸命でした。舞台のお仕事ではよく、”乗っていると立っているとは違う”と言われます。舞台の上でただ覚えた台詞をしゃべっているのと、その役になりきって存在感を放ちながら演じることの違いでしょうか。最初の頃のレポートはただ「乗っている」だけでした。そうではなく自分ならではの目線で見たことを自分の言葉で語る、そんな存在感を持って堂々と「立ちたい」と思いました。そのためにもっと「世界ふしぎ発見!」でも取り上げられることの多い世界遺産について知りたい、そう考えていた時に世界遺産検定があることを知りました。

取材中の瀬戸カトリーヌさん。テレビの取材では、普通では入ることができない場所に入れてもらうことも多い。

 

―― 3級、2級とステップアップし、1級は3度目の受検で合格されました。それぞれどのように勉強されましたか?

 3級も2級テキストを使いましたが、「モン・サン・ミシェル」や『マチュピチュ』など人気の観光地も沢山あって、勉強は楽しかったです。1級はテキストの厚さにびっくりしました。しかも上下2冊! すべて勉強するのは無理だと思い、最初の受検の時はむずかしいところは飛ばして、まず自分の好きなオセアニアや行ったことのある場所、興味のある遺産を中心に勉強しました。でも、むずかしいところも絶対飛ばしちゃいけないんですね(笑)。次からはそれぞれの遺産について太字や赤字だけではなく概要を把握する必要があると思い、自然遺産は緑、文化遺産はピンクなど、マーカーで重要な部分に線を引いていきました。さらに必ず出ると思った基礎知識や世界で最初に認定された12の遺産については、ポイントをノートに書き出してまとめていきました。




 取材する遺産について知っていると、その場所に立った時の感覚が全然違うんですね。勉強してからはそういう気持ちを自分の言葉で表現できるようになり、ディレクターさんからも「カトちゃん(瀬戸カトリーヌさんの愛称)ならではの表現が増えたね」と言われるようになりました。また外国に取材に行くと、現地の人々と交流する機会もあります。そんな時、その国や場所のことについて知識があると、コミュニケーションに役立ちますね。


瀬戸カトリーヌさんが1級受検のために使用したテキスト。各ページにはびっしりとマーキングや書き込みがされている。

人間の情熱で作られ守られてきた遺産を、未来へ確実に残していきたい

―― 勉強された中で印象に残っていることはありますか?

 人間の情熱ってすごいなぁということです。エジプトのピラミッドは200年かけて造られていますし、インドのエローラーの洞窟もやはり何百年もかけてノミと槌だけで掘られています。さまざまな遺跡に込められた当時の人々の想い―権力者への忠誠、未来の繁栄や祈りなど―を感じると、今それらを当時のままの姿で見られる幸せを感じます。

「負の遺産」も心に残っています。広島の原爆ドームやアウシュヴィッツなど、一目見れば誰でも「二度と同じことを繰り返してはならない」と思いますよね?先人が時間や費用をかけて残してくれたすべての世界遺産を、私たちも次の世代へ引き継がなくてはならないと強く思います。

 

―― 好きな世界遺産を1つ教えて下さい。

 来ましたね来ましたね(笑)。はい!世界の七不思議の1つ「ギザのピラミッド」です!
 まず、実際に行くまでは砂漠の真ん中にあると思っていたのに、近代的な建物の向こうに巨大な三角の岩山が現れた時の驚き!近づくとひとつが2.5t~5tという岩の大きさにまたびっくり!さらにてっぺんは蜃気楼がかかって見えないという大きさに「クフ王の権力のなんと偉大なことか!」と三度びっくりしました。

 実は150年前、江戸幕府から池田長発(いけだ ながおき)※1を中心とする使節団がピラミッドに派遣されているんです。彼らは着物を着た侍の格好でスフィンクスの前に立ったわけです。それから時を経て私自身がミステリーハンターとして同じ場所に立った時、150年前彼らはどう感じたんだろうな~と深い感慨がわいてきました。ちなみに当時スフィンクスは肩まで砂に埋もれていて、そのためか使節団は「巨大な首塚のようである」という言葉を残しています。今なお多くの謎に包まれたピラミッド。4回訪れていますが、私にとってはぜひまた訪れたい場所ですね!

瀬戸カトリーヌさんの好きな世界遺産ナンバー1は「ギザのピラミッド」(『メンフィスのピラミッド地帯』)。その巨大さに三度驚いたという。

世界遺産は文化、歴史、食、宗教など世界の多様性を知る入口になる

―― 世界遺産はいろいろな意味があると思いますが、瀬戸カトリーヌさんにとって、世界遺産とは何ですか?





 う~ん、何でしょうね……。
1つは文化、歴史、食、宗教など、世界の多様性を知る入口になるということです。1つ1つの遺産について知れば知るほど、世界には様々な歴史や文化があることが分かるし、現地に行けばそこの人たちがどんな生活をしているかを肌で感じます。
 もっと個人的なことで言えば、「五感で体感できる感動」ですね。たとえば歴史上の人物に扮して世界遺産の前に立つ時など、「あぁ、何百年も何千年も前にもここに人がいたんだなぁ」と細胞が震えるようなワクワク感を感じますね。

――世界遺産に興味のある人、受検を考えている人にアドバイスをお願いします。

 今思い返すと、検定の時はドキドキドキ……、オーディションや舞台の時よりも緊張していました。世界遺産検定の大先輩である鈴木亮平さんとクイズ番組で共演したときに「落ち着いてやれば絶対大丈夫ですから、とにかく落ち着いて」といわれた言葉が役立ちました。ほんと落ち着くって大切です(笑)。
 実は勉強も試験も苦手で、検定は途中で諦めかけたこともありました。でも、「世界遺産、大好き!」という思いだけで挑戦を続けてきました。だからみなさんも絶対に諦めないで、何回でもトライして下さい!
 今はアジアの世界遺産をめぐっていますが、勉強してからは旅が2倍、3倍楽しくなりました。死ぬまでにぜひ全部の遺産を見たいと思いますが、毎年数が増えていくから大変ですね(笑)。



瀬戸カトリーヌさんは仕事でもプライベートでも積極的に世界遺産を旅してまわっている。(写真は『ヴェネツィアとその潟』を訪れた時のもの)。

(2019年4月)


プロフィール
瀬戸 カトリーヌ(せと かとりーぬ)さん

ノックアウト所属
1976年1月5日生まれ
兵庫県出身
1995年 OSK日本歌劇学校卒業
日本人の母と、フランス人の父を持つハーフ。
舞台女優としてミュージカル・軽演劇を中心に芸能活動を続ける。
テレビのバラエティ番組にも多く出演しており、
「世界ふしぎ発見!」ではミステリーハンターを務めて17年目となる。

公式ブログ
しれっと、カトリーヌ


※1 池田長発(1837-1879)江戸時代末期の幕臣。幕府正使としてフランスへ渡る途中、エジプトを訪問。スフィンクスの前で撮った写真が残る。