認定級 3級
中南(なかなん) 美穂 さん
京都市ビジターズホスト (京都市認定通訳ガイド)
―― 中南さんはお住いの京都市で、通訳ガイドとしてご活躍されています。これまでのご自身のキャリアを教えてください。
父親の仕事の都合で、5歳から10歳まではアメリカで育ちました。そのときに、人々の文化や言葉に興味を持ったことが私のルーツです。子どもの頃の興味の延長で、大学では国際協力について学び、大学院では言語教育を研究。大学院卒業後は、私立の学校で7年間英語を教えていました。
教師の仕事はやりがいのある楽しいものだったのですが、生徒達がイキイキと英語を学んでいる姿を見ているうちに、「自分ももっと英語を喋りたい。英語を使う仕事がしたい」と思うようになりました。
そこで選んだのが、外国人観光客向けの通訳ガイドの仕事です。平日は教師として働くかたわら、土日は通訳やガイドについて勉強し、京都市の認定通訳ガイド「ビジターズホスト」の資格を取得しました。京都市ビジターズホストに認定されてから、昼間は非常勤講師として勤務し、夜は舞妓ショーの司会と通訳、休日にガイドとしてお客様をご案内するようになりました。
昨今のコロナ禍で、観光業は厳しい状況が続いていますが、通訳ガイドの仕事がない時期、SNSを使って京都の観光情報をコツコツと発信していたら、その投稿をみた外国人の方から「コロナ禍がおさまったら、ぜひ日本を訪れたい」と言われることも増え、いくつかの案件は具体的にお話が進むまでになりました。少しずつですが、観光業も復活の兆しも見え始めている気がします。
―― お仕事の中で世界遺産の知識はどのように役立っていますか?
家族が2級を取得していることもあり、世界遺産検定の存在は以前から知っていました。受検を決めたのは、京都市ビジターズホストになってからです。自分の住む京都についてもっと知りたいという思いや、世界の人々とコミュニケーションを取るときに世界遺産が共通の話題になるのではという思いから受検を決めました。
実際、外国人観光客をガイドするときには、検定の学習を通じて得た知識が大いに役立っています。イスラム教徒のお客様をガイドしていたときのことです、京都市内のさまざまな場所をお連れしていたのですが、ある時間になると頻繁に時計を気にされるようになりました。ふと思い当たり、「もしかして、お祈りをしたいのではないですか?」とお聞きしたところ、「そうなんです!できれば、どこかでお祈りの時間を取ってもらえないでしょうか」と非常に感謝されました。そんなことに気付けたのも、世界遺産を勉強する中でイスラム教に対する理解が培われていたからだと思います。
―― 中南さんのようなガイドの仕事に就きたいと思っている方へ向けて、メッセージをお願いします。
世界遺産の知識は、実際のガイドの場で役に立つことはもちろん、国籍や年代に関係なくコミュニケーションのきっかけになります。「このお寺は世界遺産ですよ」「日本にはこんな世界遺産があります」と言った話は、どの国のどんな年代の人とも共通の話題です。世界遺産の話が盛り上がり、「このお客様は、こんな観光地が好きなんだ」ということがわかれば、そのあとの行程にお客様の喜びそうな観光地を組み込むなど、よりお客様に寄り添った仕事ができるようになることもあります。日本を訪問する外国人の方は複数の都市を周遊することが多いため、「世界遺産について詳しいなら、このあと広島の『厳島神社』に行くから、そこも案内してほしい」などとお仕事の依頼をいただくこともありました。こんなことも、世界遺産検定の知識があってこそですね。
教師をしていた頃に、生徒たちにはよく「他の人を知ることで、自分を知ることができる」と教えていました。世界にはさまざまな文化や歴史、習慣があります。もしかしたら、私たちが考えている「当たり前」は、世界の人々にとっては当たり前ではないかも知れません。そんなことに気づくには、互いのバックグラウンドを知り、理解しようとする努力が必要です。世界遺産の勉強は、さまざまな国の文化・背景を知るのにうってつけです。異なる文化を持つ相手のことを知り、理解する大切さを、検定の学習を通じて一人でも多くの人に知っていただければと思います。
(2022年7月)