認定級 マイスター・1級・2級
乙田 上作 さん
株式会社フレックスインターナショナル
―― 企業の経営者という多忙な立場で、1年で世界遺産スペシャリストに認定されました。挑戦の動機や勉強方法を教えてください。
今年で設立26年を迎える当社では、この数年主要事業の海外航空券販売に加え、ツアー企画にも取り組もうとチャレンジしています。そんな折、人気の世界遺産を核に魅力的なツアーが企画できないかと調べていた際に「世界遺産スペシャリスト」を知りました。認定者が思いのほか少なく、取得すればユニークな企画作りに活かせるのではと思いました。社員に挑戦を勧めるならまず自分からと思い、2013年の年頭に「1年でスペシャリストになる」と全社員に宣言。2級は30時間、1級は40時間かけてテキストを何度か読み込みましたが、1級は予想通りダメでした(笑)。そこでさらに10時間増やして2013年12月検定に再挑戦し、1級を取得しました。
経営者としての仕事と両立できたのは、社員に宣言していたから。合格しなければというプレッシャーはありましたが、勉強自体は刺激に溢れていました。学生時代から旅が好きでいくつかの世界遺産も訪れてはいたのですが、知っていればより深い感銘をうけられたのではないかと思いました。たとえば「ジェミーラ遺跡」(アルジェリア)。世界史の知識が全くない時に訪れたので、山の中の廃墟としか見えなかったのですが、勉強の過程で、古代ローマを少し学ぶと、違う顔が見えてきました。事業に目を転じると、こうした知識があってこそ、お客様により深い旅の喜びや感動を提供できるのではと自ら実感しました。
―― 乙田さんがスペシャリストになられたことで、社内の機運は高まりましたか?現在、社内ではどんな取り組みをされていますか?
お蔭様で2014年7月に社員3名が2級に合格しました。世界遺産の知識はツアーの企画に限らず、社員が電話でお客様に航空券を案内する時も役立つと思います。顔の見えない電話だからこそ「信頼感」や「温かみ」は伝わるもの。さりげなく世界遺産のことに触れられれば「この人は信頼できる」と感じていただけるでしょう。また検定合格という目標を持って、業務スキル以外の知識を学ぶという経験は、公私を問わずその人の人生を豊かにするものだと思います。多くの社員に挑戦してもらえるよう、2級以上に合格したらその級の受検費用を会社負担、スペシャリストになれば2年間お祝い金を出すといった制度も設けました。
―― マイスターとして、今後取り組んでいきたいことなども教えてください。
私自身は経営者ですので、お客様に接したり、旅の現場に立ち会う機会はほとんどなくなりましたが、観光業に携わる1人の人間として、さまざまな問題意識を持てるようになったと感じています。特に自分の考えを記述式で表現するマイスターに挑戦した際、ユネスコ前事務局長の松浦晃一郎さんの著作を参考に読ませていただき、保全と観光の両立の難しさを実感しました。そうした視点で、たとえば故郷、鹿児島の世界遺産である屋久島の現状を鑑みるに、熟考すべきことは、たくさんあります。地方の行政や立法の重要な立場にいる友人も少なくありませんので、マイスターとしてなんらかの働きかけや助言ができればと思っています。その点からも今後より一層、世界遺産の知識を増やす勉強と、直接世界遺産に触れる機会を増やしていかなければならないとも感じております。
(2014年9月)