認定級 2級・3級
橋本 弘行 さん
世界遺産検定部部長
認定級 2級・3級
今村 昭浩 さん
作業療法士
―― 橋本さんは大手通信企業の子会社のコンサルティングをなさっている時、脳出血後左半身が麻痺に。リハビリの一環として世界遺産検定を受検、作業療法士の今村さんと一緒にリハビリ仲間やケアセンタースタッフ達と世界遺産検定部を立ち上げました。きっかけはなんだったのでしょうか。
橋本 弘行さん(以下橋本)/きっかけは今村さんと出会ったことです。
今村 昭浩さん(以下今村)/ リハビリしていた他の方が世界遺産検定を受けようとしていて、結局その方は受けられませんでしたが、橋本さんもどうかと声をかけたんです。
橋本/ 最初は全然興味ありませんでした。ただの観光スポットガイドみたいなものだろうと。だからガイドブックを勉強するということがピンときませんでした。でも病気により日々の仕事を失って焦っていたんです。今のようなリハビリ生活だけでいいのだろうか、このままで終わりたくないと思っていました。何か目標が必要でした。今村さんの提案で、必死の思いで調べてみたら、世界遺産検定は思っていたよりずっと奥が深かった。ただ場所の名前を覚えるわけでなく、歴史的な経緯や意義を理解して、現代の事象と紐づけることによって社会情勢の原因と結果が分かったりする。学びがいがあると思いました。今村さんをはじめ、数人の方が一緒に受検されたのも心強かったです。こうして有志で発足したのが「世界遺産検定部」です。患者もスタッフも交じって勉強し世界遺産について学ぶ部です。
―― 部活動で世界遺産検定のための勉強をして、どんなところが良かったですか?
橋本/ 世界遺産についての勉強は、日々の生活の中、大きな柱になりましたし、心身のリハビリとしても良かったです。ずいぶん通常のリハビリより負荷は大きいですが、目標があるので頑張れます。テキストの写真はきれいなので、机上の世界旅行ができて楽しいですが、ケアセンターの脳のトレーニングより、iPadで勉強会用の資料を作る方がずっとトレーニングになりました。最初の3級受検の時に車椅子持参で会場まで行くのにも、ものすごく体力を使いました。テスト中に一時間以上同じ姿勢で頭を使い続けるという健康な人にとって普通のことが、私にとっては体力気力の限界まで振り絞る挑戦であり、リハビリですから。何度も無理だと思ったことをクリアするために工夫する、その目標を達成したいという執念を思い出せたのが良かった。今村さんが一緒に勉強して、試験場まで来て一緒に受検してくれたことが大きな支えになりました。他の部員……スタッフや患者のみなさんにも大変感謝しています。
今村/ でも僕はたまに「どんな風に勉強してますか」って聞くくらいでしたけど。
橋本/ それが大きい(笑)。さらに体のリハビリだけじゃなくて、部活動でも色々なことに付き合ってもらって、助言もしてもらいました。部で世界遺産や勉強法について教え合うことによって、通常患者が一人のスタッフにお世話してもらう二人一組一方通行なのが、患者同士・スタッフ同士・患者からスタッフへ、と多方向の影響と相互リハビリを行うことができるようになった気がします。あとせっかく勉強したので世界遺産と国際関係についての皆の思いを新聞に投稿したのですが、それが2回掲載されて部活動の励みになりました。世界遺産を通じて楽しく意義のある話ができ、頑張れば試験に受かることもでき、リハビリにもつながる。学んだ後は前より日本を好きになりましたし、目標として選んで良かったと思います。こういうことにトライできる当センターはすごい、と思います。これからも多くの患者さんにとって、有意義なプログラムになることを願っています。
(2015年8月 横河 麻弥子)