石上 七鞘氏・須田 新菜さん/東京女学館大学

石上 七鞘氏(国際教養学科教授) 須田 新菜さん(国際教養学科 3年)

東京女学館大学

石上 七鞘氏(国際教養学科教授) 
須田 新菜さん(国際教養学科 3年)

一人の学生の熱意が、大学を動かす

学生の意気込みから始まった 大学活性化策

―― 東京女学館大学では「世界遺産研究会」立ち上げと大学側への提案がきっかけで世界遺産検定のガイダンス、公開受検会場化が決定されました。立ち上げにはどのようなきっかけと苦労があったのでしょうか?

 須田:高校2年生の時、交換留学生として初めてニュージーランドに行きました。それまでは海外旅行もしたことがなかったんです。高校3年生の7月に帰ってきて、試験勉強の間に趣味で調べていた世界遺産に惹かれるようになりました。ただの観光スポットのように思っていたのですが、勉強していくうちに登録基準がどのような考えで作られているのかを知り、エジプトのアブ・シンベル神殿を各国がどのように力を尽くして守ったか、などを知って感動しました。それで徐々に、何か関係のあることができるといいなと思い始めたんです。

 大学に入ってみたら、東京女学館は新しい大学でしかも少人数制であるせいか、クラブが少なかったんです。それで「大学の活性化に一役買えるし、興味のあることができる。クラブがないなら自分で作ってしまえ!」ということで学校事務局に話をうかがい、同級生らに声をかけて世界遺産研究会を立ち上げました。他大学のクラブやサークルを見ても、世界遺産を採り上げたものは殆ど前例がなく、活動内容や事務処理の形式をすべて自分達で決め、新しいことに挑戦していくことにやり甲斐を感じています。顧問の石上先生にも色々相談してずいぶんお世話になりました。

 クラブ立ち上げ前、活動内容を検討していた時に世界遺産アカデミーの存在を知りました。ゆくゆくは大学でのガイダンスをお願いしたいと考えていましたが、そうこうしているうちに大学広報担当の方が世界遺産アカデミーとかかわりがあるとして紹介してくれたんです。クラブでは週に一回部員が選んだ世界遺産のレジュメ発表、DVD鑑賞、世界遺産を訪ねるフィールドワーク、異文化関連展覧会めぐりなどの活動を行っています。

世界遺産勉強会の様子

世界遺産検定団体受検は、5名からOK

 須田:研究員の方が来てくださって、初回ガイダンスは人数も結構集まって「これはいける!」と思ったのですが、2008年の団体受検会場となることは失敗しました。最少人数である5人の受検者が集まらなかったんです。ガイダンスが8月で、団体申し込みが9月までだったので、ひと月しか時間がなかったのが理由だと思います。悔しかったですが、受検会場は大学の教室を無料で使うことになっていましたし、試験官も大学の先生が担当の予定だったので中止になっても実質的なダメージはほとんどありませんでした。

 この経験を活かして2009年は早めに大学掲示板やウェブサイト、そして今度は地域の回覧板などで宣伝していただきガイダンスも開催して、無事10人以上受検者が必要な、公開受検会場となることが決定しました。

世界遺産ガイダンスの様子

教師と学生の間が近い大学

―― 東京女学館大学の特徴は何でしょう?

石上:東京女学館大学には国際教養学部があり、須田さん達の学生は国際キャリアコースと国際コラボレーションコースに分かれていますが、特徴としては「少人数制であること」「英語に力を入れていること」「教養ある学生を育てるのに重点を置いていること」だと思います。特に英語はそれ自体でなく、英語を使ってちゃんとコミュニケーションが取れるようになることが目標です。学生の多くが航空会社のキャビンアテンダントやマスコミ業界、旅行会社などを目指しています。

須田:定員1学年115名という小さな学校のせいか先生と学生の距離が近いというか、アットホームな感じがします。

石上:そうかもしれませんね。私などはクラスの学生が2回授業を休むと電話して連絡を取っています(笑)

 必修科目は40人くらいのところもありますが、通常1クラス20人以内で授業していますし、1年生が4年生に上がるまで、同じ一人のアドバイザーがずっとその学生を担当するのもいいシステムです。インターンシップ制度もあり、ホテルや航空会社、IT関連企業に行っています。実体験を重視するので世界遺産研究会の部員はフィールドワークで京都にも行きました。学校主催の海外旅行なんていうのもあります。

須田:京都旅行で清水寺や鹿苑寺などの世界遺産も素晴らしかったですが、先生が連れていってくださった甘味屋さんも皆に人気でしたね! 抹茶氷や抹茶あんみつを食べて楽しかったです(笑)

京都旅行にて

やりたいことがあるなら自分で動き出せる人間に

―― 将来の目標は何ですか

 須田:前はキャビンアテンダントになりたいと思っていたのですが、世界遺産を深く知っていくうちに、だんだん世界遺産にかかわる仕事がしたいと思うようになりました。物や情報が目まぐるしく動き、豊かさに溢れた現代。私は、未来の創造よりも本来の豊かさや本質、多文化共生の重要性を感じさせてくれる、素晴らしい文化遺産や自然環境を伝え、保護していくことに大きな価値を感じています。

 最初から直接世界遺産に関わる仕事に就けるとは思っていません。色々な経験を重ね、徐々に理想の職に就けたらいいなと考えています。これから準備をするんですが、職に就けるか心配です。大変な不況ですし。でも大学でクラブを作って、事務もこなし、先生方や皆と協力して来たんだという自信を拠り所として、就職活動に臨もうと思います。

  私はクラブを立ち上げる際、勉強と部活動の両立はできないと思い、アルバイトもやめました。収入は減りますし、ためらったのですが、かわりに自分が生涯大事と思い、こだわれるものを見つけた気がします。

東京女学館大学 国際教養学部 国際教養学科 3年 須田 新菜さん