クラーク記念国際高等学校
東京キャンパス 学年主任
大平 嘉彰氏
―― 資格教育に力を入れ、生徒の8割が5つ以上の資格を持つというクラーク記念国際高等学校東京キャンパス。世界遺産検定の取り組みについて教えてください。
資格や検定に合格する、認定されるということは「周囲に認められた」という明確な証しです。当校ではこの証しを得たことによる「自信」が、前向きな意欲の基盤になると考えています。生徒の多様性に対応できるよう、漢検、英検、数検といったおなじみのものに留まらず、さまざまなジャンルを取り入れています。世界遺産検定は2010年から取り入れました。初年度には、夏季・冬季に2回行われる3日間の資格講習で紹介し、第8回検定では団体受検で約20名が3級に挑戦しました。認定者の中の2名は、2級にも挑戦し自分たちの力で勉強して合格したんですよ。さらに昨年からは週に一度行われる資格・検定挑戦のための授業にも取り入れました。私が授業を担当させていただいているのですが、おかげさまで生徒たちにも非常に好評です。
―― 世界遺産検定を取り入れてくださった理由は?
私自身3級の認定をいただいたのですが、学びの過程で、この検定はただ知識を得るだけではなく、「価値観」「歴史観」を育てるのにきわめて役立つと感じたからです。たとえば「戦争」について。私は世界遺産検定の授業で、「世界遺産には、戦争の悲劇を伝えるアウシュヴィッツや広島の原爆ドームなども『負の遺産』として登録されている」ということを伝えました。教科書だけで戦争の悲劇を生徒に深く考えさせることは非常に難しいです。でも「負の遺産」の存在を伝えると、「あのモン・サン・ミシェルと広島の原爆ドームは、同じように価値があるんだ」という"気づき"が生まれる。そして「もっと知りたい」「考えてみたい」という探究心に結びつき、戦争というものについて深く考えことができると思います。
―― 今後の取り組みについて教えてください。
当校が所属する創志学園グループの教育方針のひとつとして、「国際人を育てる」というものがあります。自分たちの生きる「日本、アジア」と「世界」の双方を学べる「世界遺産検定」は、しっかりとしたアイデンティティを持ち、かつ多様な世界にアプローチできる人材を育てる上でも非常に役立つと感じています。ぜひ、何らかの形でグループ全体に広めたいですね。世界遺産を次世代に伝えることの意義を知り、保全の意識をもつ若者を育てることができれば、真の意味での「国際人を育てる」ことになると思っています。
(2013年8月)