東京都立千早高等学校
ビジネス科 主任教諭
親泊 寛昌氏
―― 貴校が世界遺産学習や団体受検を導入した経緯を教えてください。
まずは本校について簡単にご説明しますと、一般的に「普通科」「商業科」といった学科を設置する高校が多い中、本校は都立高として初の「ビジネスコミュニケーション科」を設置し、2004年に開校しました。"ビジネス教育"と"英語教育"に重点を置き、「日々激変する社会環境にあっても、自立することのできるグローバルな人材の育成」を教育理念としています。まだまだ若い学校ですので、学校長をはじめとする教員一同が、新しい取り組みにどんどんチャレンジし、生徒たちにとって本当に役立つ環境を作り上げていくことが重要だと考えています。
その活動の一環として、本校では旅行会社と連携してカンボジアへの支援を行っているのですが、海外地域への理解をより深める題材として、旅行会社から世界遺産検定を紹介されたのが検定を知ったきっかけです。
私自身、"世界遺産は世界共通のコミュニケーションツール"であると認識していましたし、3年生の選択科目「国際ビジネス」の授業で役立つのでは、と感じていました。「国際ビジネス」とは日本を含めた海外各国の経済、企業戦略などについて学ぶ授業ですが、ただ教科書に書いてある貿易の話をするだけでは、生徒もイメージしづらいしとっつきにくい。そこで世界遺産を取り入れることにより、自然や地理、文化、観光などの観点で、各国のビジネス・経済についてよりわかりやすく、立体的に学べるのではないかと思ったのです。
実際に大学のAO入試や推薦入試で検定認定者への優遇措置があり、生徒たちにとって将来の選択肢が広がること、また資格取得によって自信にもつながることから、まさに"使える資格"だと感じ導入を決めました。
―― 世界遺産の授業はどのようにして行っているのですか?
2012年の4月から「国際ビジネス」内に世界遺産学習を取り入れました。授業では世界遺産アカデミーから発行されている『はじめて学ぶ世界遺産100』を使用しています。写真がカラーでイメージしやすく、重要な箇所が太文字になっていたり、ミニコラムがあったりと、飽きずに学べる工夫が随所に施されているため、生徒からは「楽しみながら学べる」と好評です。またその他に、過去問題へのチャレンジ、世界遺産検定のホームページにある動画の視聴、自作プリントを用いた補習を実施しています。
そのかいあって、先日行われた第11回の検定では、「国際ビジネス」の授業を選択している生徒31人全員が、自発的に受検してくれました。「課外授業で日光に行ってみたい!」という声も挙がっています。
受検した31人は、旅行・観光業に興味がある生徒だけでなく、経営や通訳など人それぞれ将来の目標があるようですが、世界遺産は人と人とをつなげるコミュニケーションツールとして共通の価値があるのだと理解し、楽しんで勉強しているようです。
―― 今後の取り組みについて教えてください。
英語の授業で「英語で日本の世界遺産について紹介する」といったトピックがあってもいいでしょうし、日本史や世界史の授業では「世界遺産」という切り口で展開できることがあるかもしれません。 個人的な意見ですが、そういった他教科との連携からはじまり、ゆくゆくは世界遺産を独立した教科として設けられるよう検証を重ねていき、本校が掲げる「グローバルな人材育成」のために、最大限検定を活用していきたいですね。
世界遺産の知識は大学進学にはもちろん、将来にも役立ちます
―― 世界遺産検定を受検しようと思ったきっかけはなんですか?
授業で世界経済やビジネス戦略を学ぶうちに「世界がもっと幸せになるためにはどうしたらいいだろう?」と思うようになりました。そこでまずは世界各国に住む人の環境や文化を知ることが必要なのではないか、と考えました。そんなときに選択授業で世界遺産が取り上げられていました。教材として使われていたテキスト『はじめて学ぶ世界遺産100』を見ているうちに、自分の知らない世界を学ぶ楽しさに魅了されました。また同時に、私が必要だと感じていた各国の環境や文化を知るには、世界遺産検定は格好の題材であると思いました。
―― 世界遺産検定を受検しようと思ったきっかけはなんですか?
海外や日本の社会問題を解決するために、商業ビジネスの分野からどういうアプローチをすればよいのかを学びたいと思っています。大学に進学して経済学部 総合政策学科を専攻したいと考えています。推薦入試に挑戦する際は世界遺産という観点で各国の歴史や文化を勉強していることを自己PRでアピールしたいです。
(2012年9月)