株式会社学研スタディエ
代表取締役社長
亀谷 眞宏 氏
―― 御社の事業内容について教えてください。
進学塾と英語保育所、海外にお住まいの在留邦人向けの学習塾の3つを主に運営しています。一言で括れば教育事業となりますが、海外に重点を置いている点が強みだと思います。
―― 塾のコースとして「世界遺産講座」を開講されていますが、どのようなものか教えてください。
対象は小学4年生から中学3年生の児童・生徒さんです。オンラインで学習するコースと、動画視聴コースの2つがあります。オンライン学習コースでは、自社制作の世界遺産動画を観て学びます。動画は10〜15分くらいで、各回1件の世界遺産を取り上げます。視聴後、子どもたちは与えられたテーマについて自由に意見をまとめ、それをもってほかの子どもたちとディスカッションをします。
世界遺産の知識を学ぶことも大事ですが、それだけでなく世界遺産が抱える問題などにしっかり向き合い、考える力を身につけることを重視しています。教育の用語ですが「非認知能力」の育成を目指すことに主眼を置いています。
「スケジュールの都合がつかなかったり、自分のペースで学ぶのを好む児童・生徒向けには、動画視聴コースがあります。毎回ワークブックを準備していて、テーマに対して文書をまとめる力を育むものです。」
―― 非認知能力とはどのようなものでしょうか。
認知能力は、学校の成績や知能指数のような数値で計れる力です。それに対し非認知能力とは、自ら勉強に向き合ったり、他人と協調するコミュニケーション能力であったりと、数値化されない能力を指します。文部科学省も今後子どもたちに求められていくものとしてこの非認知能力やそれに類する力を挙げており、我々は世界遺産講座でその育成に取り組んでいます。
―― 世界遺産を題材に選ばれた理由は。
2014年に遡るのですが、書店で世界遺産検定のテキストをたまたま手に取ったんです。そこでこんな検定があるのかと初めて知り、趣味のひとつにと軽い気持ちで勉強を始めたらこれが面白くて。3級、2級と学んでいくなかで、世界遺産が色々な学問に通じていることを実感したんですね。塾の現場で、歴史が暗記教科になっていることを歯がゆく感じていたのですが、世界遺産を題材にしたら深い学びが可能になるのではないか、と考えたことが原点です。2022年にトライアルで講座を始め、2023年から本格的にスタートして今年で3年目になります。
―― 亀谷社長自身もマイスターに合格され、世界遺産アカデミー認定講師にもなられました。
世界遺産講座をスタートした2023年は、私が1級を取得してから大分時間が経っていました。会社内からのマイスターを取ったほうがいいだろうという空気も感じていまして(笑)、2024年に受検し、合格することができました。マイスターの試験では、自分の考えをきちんと持ち、それを論理的にまとめて人に伝えることが試され、まさしく非認知能力を問われるものでしたね。
―― 世界遺産講座を開発するにあたってのエピソードやポイントがあれば教えてください。
やはり動画の制作はポイントになりましたね。というのも、ナレーションから素材集め、台本まですべて自社で作っているんです。外注をしておりません。最初の台本こそ私が作りましたが、いまでは5~6人のチームで動画を作れるようになってきました。このチームのメンバーはみな世界遺産検定を受けていますよ。
―― 御社では世界遺産検定の準会場として団体受験にも取り組まれていますね。
世界遺産講座をやることと世界遺産検定がつながっていけばと、準会場として団体受検に1年くらい前から取り組んでいます。とはいえ講座を受けたからといって検定を取ることが必須ではありません。講座を受けてないけれど検定を受けたいという人もいらっしゃいますし、保護者からも受検したいという声をいただいています。今は埼玉と仙台だけですが、準会場として多くの方に集まっていただけるようになれば、世界遺産の事業にもさらに活気が出てくるだろうと考えています。
―― 世界遺産講座を軸とした御社の世界遺産事業ですが、今後の展望は。
塾で学ばれているお子さんやその保護者にとって受検科目ではない世界遺産は、場合によってはとっつきにくい題材でもあります。そこで「大人になっても役に立つ本当に大切な教養講座」という、学校の教科書を深堀りしていく学習コンテンツを昨年から始めました。これは5分のショート動画で大人も楽しめる内容にしていて、そのなかに世界遺産を登場させています。保護者・生徒により親しみを持ってもらえればと思っています。
世界遺産講座を高校生や大学生向け、そして社会人のリカレント・学び直しのためのコンテンツに昇華させていくことも考えています。さらに海外でも通用するコンテンツとして発信することも目指しており、現在すでに英語化も進行中です。将来的にはこうしたグローバル化も柱に据えていきたいと考えています。
「世界遺産講座に興味を持ってもらうため、世界遺産を実際に訪れるツアーも実施したことがあります。写真は日光・鬼怒川を訪れたときのものです。」
―― 世界遺産を学びたいと考えている子どもたちや保護者の方にメッセージをお願いします。
世界遺産の学習を通じてさまざまな学問への興味・関心を持ってほしい、これが一番のメッセージです。世界遺産というのは日本で通用する価値観に留まらず、今後広く世界へ羽ばたいていくための教養になると思います。子どものうちから世界遺産を通じて広い視野をもって、どんどん外の世界に飛び出していってほしいと思っています。
▼「学研スタディエ」「世界遺産講座」の公式HPはこちら
(2025年1月)