■ 研究員ブログ160 ■ アマゾン火災も消費税率アップも環境破壊に関係する?

今年も暑い夏でしたね。夏は「猛暑日」が当たり前のようになってきて、ちょっと恐ろしくなります。アメリカの海洋大気局(NOAA)によると、今年7月の世界の地表面と海面温度は、観測史上最も高かったそうです。人間の経済活動だけが気温上昇の原因ではではないかもしれませんが、無関係ということはありえないと思います。日本でも最近の自然災害は異常に感じます。昔はこんなに荒れ狂う台風が何度も来たという記憶はないのですが、どうですか?まぁ僕の子供の頃の記憶はあまり当てにならないですが。

こうした地球規模の温暖化に影響があるのではないかと指摘されているのが、今年8月に起こったブラジルのアマゾン火災です。アマゾンなどの森林は、光合成によって二酸化炭素(CO2)を吸収し酸素を排出しているため、森林の減少はCO2の排出量増加に直接影響するのです。

今回のアマゾン火災の原因の1つに、不法な森林放火や野焼きがあることが指摘されています。(乾燥する乾季には、自然な出火による森林火災もあります。)今年1月に就任したブラジルのボルソナロ大統領が、環境保護よりも経済目的の開発を優先させ、牛肉や大豆の輸出量を増やすことを目指したため、アマゾンの森林に火をつけて農地を広げたり放牧地を広げようとする人々が増えたと考えられているのです。

報道の中では、農家の人々が「アマゾンの熱帯雨林を守っていても生活していけない。森林を焼いて農地や放牧地を広げれば経済的に豊かに暮らせるようになる。」というようなことを話しているのを何度も目にします。経済的な豊かさを求めることは重要ですし、人々は誰もが豊かな生活を送る権利があります。

しかし、アマゾンを保護することと豊かな暮らしを送ることは、本当に対立するのでしょうか。

森林を焼いて農地を増やしても、ガソリンなどの強い炎で焼かれた土地は、栄養分も少なく長期的な農地化には向いていないという指摘もあります。またアマゾンからでる水蒸気から生まれた雲が一帯に雨を降らせますが、森林が減ると農業に必要な雨が減り乾燥化が進むでしょう。農作物の輸出量を増やして経済的に豊かになりたいのであれば、自然破壊をしながら旧態依然の農業をするのではなく、農業のビジネスモデル自体を変える必要があります。

以前、少ない国土で高い農業生産率を誇るオランダの農業が、日本でも注目を集めました。農作業のIT化や自動化、作物品種の選択集中、農業施設の大規模化などによって、オランダはアメリカに次ぐ農業輸出額を誇っています。因みに2018年の3位はブラジルです。

陸続きで先進国が集まるヨーロッパ各地に行くことができ、EU圏内の恩恵も受けているオランダとブラジルを同じように考えることはできませんが、それでもビジネスモデルを考え直すことで、自然破壊をしなくても経済効率を上げることは可能だと、僕は思います。古いビジネスモデルを個々の農家に任せるのではなく、新しい技術に国を挙げて投資する方が、政治家に求められていることのはずです。自然保護がそのまま経済的な豊かさにつながればもっとよいのでしょうが。

自然保護と経済開発が、両立しないことのように語られるのは、考えることを止めてしまっている証拠です。自然保護が経済活動の足かせになっているという意見もそうでしょう。他国の指導者ですから、僕から何か言うのは失礼ですが、控えめに言ってももう少し長期的な広い視野で考えて欲しいなと思います。

2015年の国連サミットで出されたSDGsの中でも、「持続可能」というのは重要なキーワードです。10月からの消費税率アップに関連して軽減税率が導入され、外食産業でもテイクアウト商品の開発に力を入れているという報道があります。しかしそこでプラスチック容器が多く使われるようになると、ビニール袋やストローなどのプラスチック製品を減らしていくという国際的な環境保護対策とは逆行します。SDGsの目指す持続可能な社会とも相容れないでしょう。

環境問題は、遠くのアマゾン火災だけでなく、僕達の身近なところでも考えなければいけないことが沢山あります。だって今よりも夏が暑いのは嫌だし、ゴミの打ち上げられた海岸も見たくないですから。

(2019.09.19)