■ 研究員ブログ190 ■ 延期されていた世界遺産委員会の開催地が決まりそうです!

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ここのところ毎週末のように講演会などがあって慌ただしくしていたら、あっという間に12月がもう見えるところまで来ていて、びっくりしました。2022年もあとわずかなんですね。やり残したことがまだまだたくさんあるのに、サッカーのワールドカップまでやっているから、それも観ていたら時間が全く足りません。

2022年にやり残していると言えば、第45回世界遺産委員会もそうです。世界遺産条約50周年を記念する世界遺産委員会は、6月19日からロシアのカザンで開催予定でした。しかしロシアによるウクライナ侵攻を受けて、議長国がロシアであることに疑問を呈し参加のボイコットを表明する国が出たため、開催が延期されてきました。

議長国を変更する規則がないため、開催地が仮にパリのユネスコ本部に変更されたとしてもロシアが議長国を務めることになり、問題の解決につながりません。世界遺産委員会は1年に1回以上開催すると決められているものの、後には引けないロシアの国際的な状況から考えても、半年以上も開催の目処すら立たない難しい状況にありました。

それが今回、大きな動きがあったようです。11月24日の報道によると、ロシアの特命全権大使であったアレクサンドル・クズネツォフ氏が世界遺産委員会の議長を辞任したというのです。ユネスコの世界遺産センターのサイトにはまだ何も情報が出ていませんが、報道ではすでに流れています。

先ほど、議長国を変更する規則がないと書きましたが、議長が自ら退いた場合は話が別です。世界遺産委員会の手続き規則では、議長(議長国)がその役目を果たすことができない場合は副議長国がその代わりを務めると書かれています。つまり今回のように、辞任により議長(議長国)が職務を果たせない場合は、副議長国が代わりに議長国となって世界遺産委員会を開催することになります。

第45回世界遺産委員会の副議長国は、アルゼンチン、イタリア、サウジアラビア、南アフリカ、タイの5ヵ国です。手続き規則によると、代理を務めるのは、英語の国名順で議長国の次に来る国となっています。先ほどの5ヵ国を英語で見ると、
Argentina
Italy
Saudi Arabia
South Africa
Thailand

です。

ロシア(Russian Federation)は、ItalySaudi Arabiaの間に入りますので、世界遺産委員会議長国の候補はサウジアラビアということになります。サウジアラビアが辞退したら次は南アフリカ、その次がタイという順番です。

恐らく年内には第45回の世界遺産委員会の開催地が決定しそうです。よかった。

しかし開催地が決定したとしても、開催国の受け入れ準備もありますし、また基本的に開催の案内は60日前までに各国に連絡をしないといけないので、第45回世界遺産委員会が行われるのは2023年の春以降になるのではないかと思います。

第45回世界遺産委員会で日本から新たに登録を審議される遺産はありませんが、軍事行動や政治の問題のために、文化や自然の保護に関する国際的な議論が滞るのは非常に残念ですので、少しでも動き出しそうな気配があって嬉しいですね。

※写真はサウジアラビア最初の世界遺産「アル・ヒジルの考古遺跡(マダイン・サレハ)」です。

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(2022.11.28)

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