12月の第42回世界遺産検定のメインビジュアルが『タージ・マハル』に決まりました。今年度の世界遺産検定のポスターやパンフレットでは「留学生のオススメ世界遺産」として、日本に留学経験をもつ外国人の方に母国の世界遺産を紹介してもらっていますが、42回検定の『タージ・マハル』をオススメしてくれたのは、Shinkansen(新幹線)などの高速鉄道について学ぶために東京大学大学院(工学研究科)へ留学中のシカ・サイニさんです。インド人ならではの視点で『タージ・マハル』の魅力を紹介してもらいます。
シカさんの話にいく前に、まずは『タージ・マハル』の基本情報をおさらいしておきましょう。インド北部の街アーグラにある『タージ・マハル』は、ムガル帝国5代皇帝シャー・ジャハーンが愛妃ムムターズ・マハルのために築いた霊廟です。総面積17万㎡(東京ドームの3.6倍)の広大な土地に白大理石で建てられています。世界各地から石材などの材料が集められて20年がかりで完成しました。職人も世界中から集められ、フランスの金細工師やイタリアの宝石工もなかにはいたそうです。
さて、ここからシカさんの話です。彼女はインドの首都デリー出身の彼女は、これまでにインド国内の多くの世界遺産を訪ねてきたといいます。「どの世界遺産も素晴らしいものでした!インドでは古くから各地でさまざまな文化芸術が花開きました。それらがインドの世界遺産に忘れられない印象を与えています」
シカさんが訪ねた世界遺産のなかでもとくにオススメしたいのは『タージ・マハル』だと言います。「タージ・マハルはインドにおけるムガル帝国時代の建築の典型例で年間700~800万人が訪れます。世界七不思議の1つにも数えられている場所です」
シカさんは『タージ・マハル』を見る上での3つのポイントを挙げてくれました。まず1つ目は“装飾”です。「壁にほどこされた緻密で洗練された大理石の彫り物やファサードの美しいカリグラフィーは必見です」。
シカさんが2つ目にオススメとして挙げたのは“庭園”です。「タージ・マハルにはムガル帝国時代の様式の庭園があり、それがタージ・マハルをよりいっそう壮麗にしています」。タージ・マハルの庭は水路などで全体が幾何学的に四分割された“四部庭園(チャハル・バーグ)”で『コーラン』に描かれている「天上の楽園」を再現したものです。
そして最後に彼女が『タージ・マハル』のおすすめポイントとして挙げてくれたのが“色の移り変わり”です。「大理石でできた真っ白なタージ・マハルは、夜明けには空の色を受けてピンク色に染まります。満月の夜にはミルキー・ホワイトに染まります。そんな風景を見ることはとても魅惑的な体験です」。
さて、日本で高速鉄道について専門的に学ぶほど鉄道が好きなシカさんは、もう一つ母国のオススメ世界遺産を紹介してくれました。『インドの山岳鉄道群』です。この遺産は、現在も運行する「ダージリン・ヒマラヤ鉄道」、「ニルギニ鉄道」、「カールカ=シムラー鉄道」の3路線からなります。「トイ・トレイン(ダージリン・ヒマラヤ鉄道の愛称)にのると子供心に帰ったような気持ちになれます。ダージリンのマーケットで新鮮な果物を買い求めるのもいいですね!」(シカ・サイニさん)
『インドの山岳鉄道群』は、イギリスの植民地時代、紅茶の葉の輸送や、高原保養地に向かうイギリス人観光客の便宜のため、19~20世紀初頭に当時の最新技術を駆使してイギリスが建設しました。1881年に開通した「ダージリン・ヒマラヤ鉄道」は世界最古の山岳鉄道です。インドの独立後はこれらの山岳鉄道がインドの鉄道事業を大きく発展させました。
シカ・サイニさんは東京大学で日本の高速鉄道の技術を学んだ後は、インドへ帰って母国の高速鉄道プロジェクトに関わりたいといいます。「インドと日本という二つの偉大な文明の友好関係を深めていくために努力していきたいです。日本にいるあいだに日本の言葉や豊かな文化についても学び、両国の架け橋となっていきたいです」(シカ・サイニさん)。いつの日かシカさんがつくった高速鉄道が世界遺産になる日が来るかもしれませんね。
(世界遺産検定事務局 大澤暁)
タージ・マハル
登録基準:(i)
登録年:1983年登録
登録区分:文化遺産
インドの山岳鉄道群登録基準:(ii) (iv)
登録年:1999年登録
登録区分:文化遺産
次回の更新は2020年9月下旬を予定しています。