本日より受付がはじまりました第46回世界遺産検定のメインビジュアルは、ポーランド共和国の『クラクフの歴史地区』です。聞きなじみのない方もいるかもしれませんが、クラクフは11世紀初頭から17世紀のワルシャワ遷都までの間、ポーランドの首都として栄えた古都です。さらに、1978年に選ばれた世界で最初の12件の世界遺産のひとつでもあります。今回はクラクフに4年間の滞在経験があるポーランド政府観光局の石川みゆきさんにその魅力をうかがっていきます。
まず石川さんが紹介してくれたのが「聖マリア教会」。こちらはクラクフの中央広場に立つ13世紀に築かれたゴシック様式の教会です。レンガ造りの建物も素晴らしいですが、石川さんが注目して欲しいというのが“ラッパ吹き”です。「聖マリア教会では高い塔の上の窓が毎時00分に開かれ、そこからラッパが吹き鳴らされます。この演奏は曲の途中でピタッと止まってしまいます。じつはこれ13世紀にモンゴル軍がポーランドに来襲した時に、敵の襲撃をラッパで告げた吹き手が、矢で喉を撃たれて亡くなってしまったことを表しています。命と引き換えに街を守ったラッパの吹き手の勇気を今に伝えているのです」(ポーランド政府観光局 石川さん)
ポーランドの首都だったクラクフは、13世紀半ばにモンゴル軍に攻め込まれて破壊された歴史をもちます。その後、街は再建され自治都市として繁栄するのですが、700年以上たった今でも、当時の出来事を伝えるラッパの音が鳴り続けているんですね。
続いて石川さんが紹介してくれたのが、ヨーロッパでも有数の歴史ある美しい広場として知られる中央広場の地下に2010年にオープンした「クラクフ地下博物館」です。“地下”博物館とはあまり聞いたことありません。どんな博物館なのでしょうか?
「こちらはクラクフの中央広場の地下に集積したゴミを見ることができる博物館です。じつはクラクフの中央広場の地面は時代を追うごとに高くなっています。中央広場にどんどんゴミが積もっていったためです。この“地下”博物館では、そんな昔のゴミを見て考古学的観点から、時代ごとの生活の変化を知ることができます」(ポーランド政府観光局 石川さん)
広場の地下に積もったゴミを展示してしまうとは……発想が斬新ですね。この「クラクフ地下博物館」は3Dやマルチメディアを使った体験型の展示が特徴で、人気スポットの1つとなっているそうです。中央広場の地下に広がる謎めいた「クラクフ地下博物館」、ぜひ訪ねてみたいです。
石川さんは「ポーランドに滞在するならば、首都ワルシャワよりクラクフに滞在する時間を長く取った方がいい」と勧めるそうです。それだけ、さまざまな楽しみ方のできる味わい深い街ということです。そんな楽しみの一つとして石川さんが挙げるのが“料理レッスン”。「クラクフの多くのレストランが旅行者へクラクフ名物のオブヴァジャネック(ベーグルの元祖といわれるパン)などの料理講座をやっています。14世紀からの歴史をもつ老舗レストラン『ヴィエジネク(Wierzynek)』などでもやっていますよ」
旅先でその土地の料理を教わるのは、とても良い思い出になりそうですね。この他にも、日本にゆかりのある「日本美術技術博物館“マンガ”館」や、映画『シンドラーのリスト』の舞台となったユダヤ人街「カジミエシュ地区」など、見どころいっぱいのクラクフの街。コロナ禍が終息したら、ぜひ訪れてみたいです。
(世界遺産検定事務局 大澤暁)
クラクフの歴史地区
登録基準:(iv)
登録年:1978年/2010年範囲変更
登録区分:文化遺産
次回の更新は2021年10月下旬を予定しています。