今回は日本の自然遺産『屋久島』を取り上げます。屋久島は1993年に日本で最初の世界遺産の1つとして登録されたので、2023年で登録から30周年を迎えます。記念すべき節目の年に向けて、屋久島では様々な取り組みが予定されているそうです。
その1つとしてすでにはじまっているのが、屋久島の豊かな自然や環境を通じてSDGsについて学ぼうというボードゲーム「屋久島版Get The Point」の制作と活用です。「循環型社会の構築」や「限りある資源の有効活用」、「自然との共存」が、自分たち自身の暮らしを豊かにし、その豊かさを持続させていくために不可欠であるということを実感することを目的としています。
例えば、屋久島の99%の電力を賄っている「水力発電」や地元の植林した杉を使った「屋久島地杉の家」、屋久島特産の「たんかんのジュース」などがポイントアップとなるプラスのカードに使われています。一方、観光地ならではの課題である「オーバーツーリズム」や「水質汚染」などがマイナスのカードとなっています。これらのカードの要素は、屋久島町内の小中高生を中心にワークショップを実施し、延べ700人以上へのアンケートから特産物や地域貢献、課題感を抽出して決めたということです。
ゲームの制作に携わったNPO法人HUB&LABO Yakushima代表理事の福元豪士さんはこう話します。「元々、屋久島では町が『屋久島型ESD(Education for Sustainable Development)』と言って、SDGsも絡めた持続可能な開発のための教育というのをずっと進めていました。その一貫として世界遺産登録30周年で何かこの教育をもっと広げるためにできないかということで屋久島版ボードゲームの開発がはじまりました。身近な題材を使うことで、SDGsが掲げる目標やメッセージが、子どもたちや地域住民、観光で訪れる人々により伝わりやすくなります。」
「屋久島版Get The Point」はすでに屋久島町の多くの小学校、中学校、高校の授業で導入されています。「子どもたちの反応も良いのですが、教員の皆さんがすごく良い教材だと評価してくれています」と福元さんは話します。「屋久島というこの島は世界遺産に登録されている『世界の宝』なんだということを子どもたちに伝える意義はとても大きいと思います。子どもたちの中には世界の宝である屋久島の自然を守らなければということで、ごみ拾いをする子どもたちなどがいます。そうした子どもたちのアクションが大人も変えていっています。」
屋久島の世界遺産登録エリアは島の一部分ですが、30周年を機にこれを拡大しようという動きもあるそうです。「今登録されているエリア以外にも学術的にすごく貴重な自然が残るエリアがあるので、そこも世界遺産に拡大登録するために会をつくって動き出しています。SDGsというのは2030年までの目標ですが、そこで終わるわけではありません。屋久島はその先を見据えてすでに動き出しています。世界中の人の注目が集まる島なので、世界の見本となる活動を行って、発信していければ良いと思っています」。
SDGs後の2030年以降の世界を見据えて、すでに動き出している屋久島。今後もますます注目していきたいですね。
(取材協力:すなばコーポレーション、日テレアックスオン)
(文:世界遺産検定事務局 大澤暁)
屋久島
登録基準:(vii)(ix)
登録年:1993
登録区分:自然遺産
次回の更新は2023年3月を予定しています。