第59回世界遺産検定の申込みがはじまりました。今回のパンフレットの表紙を飾るのは、シーギリヤ・ロックで有名な『シーギリヤの古代都市』です。この高さ200mの岩山の頂上に壮麗な宮殿や庭園のある都が築かれたという、ロマンあふれる世界遺産です。さらに、この空中都市を5世紀に築いたカッサパ1世は、王である父を殺害し、弟を追放し、ようやく王位についたが、最後は弟との争いに敗れて自害する・・・という非常にドラマチックな生涯を送った人物でもあります。
まず、シーギリヤの位置を確認しましょう。インド洋に浮かぶ島国スリランカの中央部に位置しています。シーギリヤには鉄道が引かれておらず、スリランカ最大の都市コロンボからはバスの乗り継ぎでのアクセスが一般的で、4時間半ほどかかります。バスの運賃は日本円にして500円程度(2024年12月時点の為替レート)とかなりリーズナブルです。
シーギリヤ・ロックは頂上まで上ることができます。頂上までの階段は約1,200段あり、ところどころに見どころがあります。
まず山の麓にあるのがアジア最古の庭園の1つとされる「水の庭園」の跡です。カッサパ1世が世界中から集められた500人の愛妃達と沐浴を楽しんだと言われる庭園です。上下水道や噴水を備えており、高い治水技術の存在を示す庭園です。この高度な技術が発達した背景には、紀元前から灌漑池を造り続けてきたスリランカの農業水利技術があると考えられています。
階段を上っていき、山の中腹にあるのが、かの有名な「シーギリヤ・レディー」の壁画です。華やかな装身具で身を飾った半裸の「天女」たちが描かれていて、これはカッサパ1世の宮殿で暮らす女性たちをモデルに描かれたと考えられています。かつては500体ほどの壁画があったとされますが、大部分は風化し、現在残っているのは19世紀末に発見された21体のみです。500体の壁画が広がっていた時は、さぞ壮観だったでしょう。
階段をさらに上っていくと「獅子の門」に到着します。ライオンの像は、現在は前足部分しか残っていませんが、かつては岩の中腹に像の頭が置かれ、口の中から階段が伸びていたと考えられています。「獅子の山」を意味するシーギリヤの名前は、この「獅子の門」に由来します。
「獅子の門」の階段が頂上まで続く最後の最も長い階段です。これを上りきると視界が四方に開け、1万5000㎡の広大な宮殿跡が広がっています。そこではカッサパ1世の玉座や王妃達の部屋、沐浴場、舞踏会場など、往時の豪奢な暮らしを伝える遺構を見ることができます。父を殺し、弟を追放し、王位を手にしたカッサパ1世が、この岩山の上の「空中都市」でどのような気持ちで暮らしたのでしょうか? 現地に行ったら、そんなことに思いをはせてみても良いかもしれません。
さて、シーギリヤ・ロックの入場料は、日本円で5,400円(2024年12月時点の為替レート)ほどします。バスに比べると少し高い気もしますが、この入場料の中にはシーギリヤ・ロックの入山料にくわえてシーギリヤ博物館の入場料金も含まれています。こちらも忘れずに見学するようにしましょう。
このシーギリヤ博物館は、日本のODAでJICAにより整備されたものです。博物館の目玉の展示が、復元されたシーギリヤ・ロックと水の庭園の模型です。栄えていた時代のシーギリヤの姿を見ることができます。さらに、「シーギリヤ・レディー」の壁画のレプリカもあります。本物の「シーギリヤ・レディー」は壁画保護のため現在は写真撮影が禁止されていますが、ここでは撮影できます。
この博物館では、日本人の専門家の支援によって、スリランカ人学芸員のスキルアップが行われているそうです。博物館に行ったら、そんなところにも注目して、見てまわるのも面白いかもしれません。
シーギリヤの古代都市
登録基準:(ii)(iii)(iv)
登録年:1982年登録
登録区分:文化遺産