先週末の9月8日、ドイツで巨大なミュージアムがオープンしました。セレモニーにはアンジェラ・メルケル首相をはじめ各界を代表するゲストが駆けつけ、ミュージアムの開館を盛大に祝いました。このミュージアムの名は「バウハウス・ミュージアム・デッサウ」。1919年に開校した総合造形学校「バウハウス」の設立100周年を記念して建てられたものです。歴史に名高いアート・スクールの「バウハウス」を皆さんは知っていますか?
バウハウスは建築家ヴァルター・グロピウスによって設立された学校です。建築の下にすべての造形活動を統合することを理念に掲げ、パウル・クレーやヴァシリー・カンディンスキーといった当時の先端的な芸術家たちを教授陣に招いて画期的な造形教育のシステムを打ち立てました。そこから多くの革新的な造形や思想が生まれ、20世紀の建築やデザインに革命的な影響を与えたといわれます。
バウハウスに関わる建物は世界遺産に多く登録されています。まずは『バウハウス関連資産群:ヴァイマールとデッサウ、ベルナウ』です。これは1919年にドイツの古都ヴァイマールで開校し、その後デッサウ、ベルリンと拠点を移しながら、1933年にナチス・ドイツの弾圧により閉校に追い込まれるまでのバウハウスの歴史を伝える校舎などの建造物をまとめて登録したシリアル・ノミネーション・サイトです。
バウハウス・ヴァイマール校舎 (設計: アンリ・ヴァン・デ・ヴェルデ 1904-1911年) photo Eiji Ina
バウハウス・デッサウ校舎 (設計: ヴァルター・グロピウス 1925-1926年) photo Eiji Ina
グロピウスが設計した『アールフェルトのファーグス靴型工場』も世界遺産に登録されています。巨大なガラスパネルが特徴的な、“建築としての美”と“工場としての機能美”を兼ね備えたモダニズム建築の先駆けです。また、グロピウスは『ベルリンのモダニズム公共住宅』にも中心的な建築家の一人として関わっています。
さらに、イスラエルの世界遺産『テル・アービブの近代都市 ホワイト・シティ』の一部もバウハウス出身の建築家が設計しています。この他にもチェコにある世界遺産『ブルノのトゥーゲントハート邸』は、バウハウスの3代目校長、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエによって設計されました。こうしてみると世界遺産のなかでバウハウスに関わる建築はかなりの数にのぼることがわかります。