解説
キリスト騎士団は、ポルトガルにおけるテンプル騎士団の後身です。テンプル騎士団とは中世ヨーロッパの騎士修道会です。十字軍遠征以降勢力を伸ばしましたが、財と権力を欲したフランス王フィリップ4世により、弾圧され壊滅しました。しかしポルトガルでは、国王がテンプル騎士団を保護したため、14世紀にキリスト騎士団として再構成しました。19世紀に一度廃止されたものの、20世紀初頭に復活し、以降ポルトガル大統領が騎士団のグランドマスターを担っています。
ポルトガル中西部の都市トマールには、テンプル騎士団が築き、キリスト騎士団に至るまで拠点とした修道院があります。元はイスラム教徒の侵攻を防ぐための城塞として築かれました。その後修道院が5世紀にわたって建設されたため、ロマネスク様式や、ルネサンス様式、ゴシック様式など各時代の様式美が反映されています。
12世紀に建てられた円堂は、エルサレムの聖墳墓教会などをモデルとしたと言われています。騎士が馬に乗ったまま円堂の周囲を回り、祈りを捧げられるように設計されています。エンリケ航海王子が築いたゴシック様式の回廊や、ポルトガルの大航海時代の栄華を感じさせる、マヌエル様式の装飾が施された大窓など、様々な時代の建築様式を見ることができます。