解説
コートジボワール共和国に現存する20のモスクのうち、8つが『コートジボワール北部にあるスーダン様式のモスク群』として世界遺産に登録されています。これらのモスクはすべて土で作られており、シアバターや牛糞、果物のエキスなどを結合材としています。しかし、近年はシアバターの価格が高騰しているため、オイルなどの代替品を使わざるを得なくなっています。
このようなモスクの建築様式は、14世紀頃に金や塩を扱うサハラ交易で栄えた、マリ帝国のジェンネで生まれました。サハラ交易や帝国の内紛・崩壊によって多くのイスラム商人が南下すると、コートジボワールを含む西アフリカのサバナ地域にはスーダン様式といわれるモスクが築かれました。壁から突き出した木材や、陶器やダチョウの卵を冠した垂直なバットレス(控え壁)、先が細いミナレットなどが特徴ですが、コートジボワールの湿潤な気候に合わせて、より強固なバットレスが設けられています。
これらのモスク群は、イスラム教と地元の建築様式が融合した優れた例であるとして、2021年に世界遺産となりましたが、シアバターなどの伝統的素材に代わる新素材の使用、都市開発や農村人口の流出などが、遺産保護の課題として挙げられています。