解説
「呪いの板(Curse Tablet)」は、ギリシャ・ローマ世界で行われていたおまじないのような行為、また呪いの文言を刻んだ板のことです。バースのローマン・バスでは、呪いの板が大量に発見されています。その大半は、入浴中に衣服などを盗まれた人々が書いたと思われるもので、盗人への呪いや盗難品の返還を願うものでした。人々は板に呪いの文句を刻み、女神スリス・ミネルヴァの霊が宿ると考えられていた泉に投げ込みました。
バースは古来温泉地として知られてきた街です。1世紀にローマ帝国の支配下に入ると、温泉を用いた大浴場や神殿が建設されました。「バース」という名は、この街に温泉があるが故に付けられたものです。
ローマ帝国衰退後、一時街は廃れましたが、17~18世紀のイングランドで文化や芸術が発展すると、温泉地として大規模な再開発が行われました。特にジョージ1世、2世、3世の時代には、温泉療養に訪れた人々が楽しめるような、美しい建築と景観が形成されました。
世界遺産には単体で『バースの市街』として登録されているほか、『ヨーロッパの大温泉都市群』にも含まれています。