解説
吉田博(1876~1950)は、明治から昭和にかけて活躍した画家です。日本の伝統的な木版画の技法に、西洋画の要素を取り入れた「新版画」を代表する版画家の1人で、国内外で広く知られています。吉田博は1930年代に東南アジアやインドへ渡り、数十点の版画を制作しました。作品の1つ「サンチの門」は、サーンチーの第1ストゥーパの塔門を描いています。
サーンチーの仏教遺跡は、インドでも最も古い仏教建築が残っている巡礼地の1つです。3つの大型ストゥーパ(仏塔)と祠堂、僧院など紀元前3~後12世紀の遺跡が残り、丘陵地にある約50の遺跡群が登録されました。
12世紀までは仏教の聖地として栄えましたが、仏教の衰退に伴い、忘れ去られていきました。19世紀に再発見された当時、何世紀も前から廃墟と化して木や草に覆われていたそうです。20世紀初頭に本格的な調査が始まり、その結果、インドにおいて仏教が栄えていたほとんどの時代を通して、この地が仏教の中心地として機能していたことが判明しました。
遺跡内で最も古い第1ストゥーパは、マウリヤ朝3代王・アショーカが各地につくった8万を超すストゥーパの1つとされており、紀元前3世紀頃の建立と考えられています。