解説
チェコ西部に位置するカルロヴィ・ヴァリは、1992年に群馬県吾妻郡草津町と姉妹都市協定を締結しました。どちらも温泉地として有名な都市です。なお、英国の都市バースは大分県別府市と姉妹都市となっています。
世界遺産『ヨーロッパの大温泉都市群』は、7ヵ国11都市の温泉都市で構成されるトランスバウンダリー・サイトで、ヨーロッパの温泉文化の発展に貢献した温泉地の中でも特に大規模な都市です。
ヨーロッパにおける温泉文化は古代ローマ時代からすでに見られましたが、1700年頃から1930年代にかけて最高潮に達しました。入浴はもちろん、飲泉、娯楽や社会活動(ギャンブル、演劇、音楽、ダンスなど)の場となり、都市を訪れた芸術家たちは療養や創作を行いました。チェコのカルロヴィ・ヴァリでは文豪ゲーテが湯治を行い、オーストリアのバーデン・バイ・ウィーンでは作曲家のベートーヴェンが交響曲第9番を作曲しました。
いずれの都市も鉱泉を中心に発展し、そこから治療、療養、レクリエーション、社会的機能に特化した空間が構成されていきました。温泉施設を構成する建築群には、浴場、ポンプ室、飲泉ホール、治療施設などがあり、入浴や飲泉に実用的な設計がなされている点が特徴です。