解説
ブルガリア南西部の山中にある『リラの修道院』は、キリスト教のひとつ、ブルガリア正教会の総本山です。ブルガリアで一番大きな修道院でもあります。ここは10世紀初めに修道士のイワン・リルスキーが洞窟で修行生活を送るようになり、その後、彼を慕う多くの修道士や巡礼者が集まって暮らすようになりました。
12世紀には第二次ブルガリア帝国の皇帝から支援を受けて発展しました。14世紀には大地震やイスラム教のオスマン帝国の支配などで打撃を受けましたが、オスマン帝国の君主が、キリスト教徒が修道院で修行を行うことや、ブルガリア語の書物を読むことを認めたため、ブルガリア正教の中心地として現在まで続いています。
『リラの修道院』の博物館には、縦81cm、横43cmの木製の十字架「ラファエルの十字架」が残されています。これは修道士ラファエルが視力を失うまで約12年かけて彫り上げた十字架で、140の聖書のエピソードや1500人もの人物が、ルーペなどを用いながら細密に彫り上げられています。