解説
地中海沿岸のビブロスは、約5,000年前ごろから海上交易で活躍していたフェニキア人の港町として発展しました。世界でも最も古い歴史をもつ都市のひとつです。地中海への玄関口であったため、エジプトやペルシアなどの大国に支配されましたが、商業のネットワークを用いて繁栄しました。都市にはフェニキア時代の城塞やローマ時代の円形劇場、11世紀の十字軍の要塞=写真=などが残されています。
1922年にビブロスの遺跡からフェニキア文字の碑文が発見されました。この文字は、キプロスを経由してギリシャに伝わり、それがアルファベットになったと考えられています。
古代ギリシャで都市国家が勢力を広げると、フェニキアの商人たちはエジプトとギリシャを結ぶ中継貿易で富を築きました。ビブロスがエジプト産の紙(パピルス)をギリシャに輸出する港町だったため、当時のギリシャ人は紙のことを「ビブロス」と呼んでいました。そのビブロスが紙から書物の意味にかわり、「バイブル(聖書)」の語源にもなりました。