解説
イラク共和国の北部にある『円形都市ハトラ』は、紀元前3世紀頃から後3世紀頃にかけてこの地を支配したパルティア王国の軍事基地だった都市です。パルティア王国は、ローマ帝国とよく戦っていて、砂漠と草原に囲まれたこの場所は、ローマ帝国を迎え撃つのにちょうどよかったのです。
紀元前116年から後198年にかけて、パルティア王国とローマ帝国の戦いが激しくなりました。直径2キロメートルの円形の城壁に囲まれたハトラは、城壁に163もの塔を作り敵の動きを監視した反面、入口の門は4門しか作らず、ローマ軍を中に入れませんでした。こうしてローマ軍の攻撃を耐えぬきパルティア王国を守りましたが、その後、急速に力をつけたササン朝ペルシアの前に滅亡しました。
ハトラの都市遺跡には今でも多くの謎が含まれており、発掘が急がれていますが、政情不安のために現在は中断されています。また、IS(イスラム国)がハトラを占領して破壊したとして、2015年から危機遺産に登録されています。