解説
アルジェリアの南東部、一面に砂漠が続くサハラ砂漠の最も奥地にタッシリ・ナジェールはあります。この地は深い谷や干上がった川、浸食作用によってできた「岩の森」と呼ばれる独特な景観などが広がる乾燥した地帯です。しかし、かつてはまったく別の自然豊かな土地であったことがわかっています。その歴史を伝えているのが、約2万点も残されている岩壁画です。
岩壁画の中にはさまざまな動物や狩猟の様子、放牧民の姿などが描かれており、この一帯が先史時代には定期的に雨が降る恵まれた地域で、豊かな動物相が見られたことがわかりました。実際、近くに大きな湖の痕跡や、そこに流れ込んでいた川の痕跡も見つかっています。「タッシリ・ナジェール」とは、現地のタマシェク語で「川が流れる大地」という意味です。岩絵にはそうした人々の生活や動植物だけでなく、「セファールの白い巨人」と呼ばれる人物像なども残されており、研究が進められています。