――添乗員としてヨーロッパを中心に活躍されている小島さん、井上さん。
世界遺産スペシャリストとして「世界遺産をこんな風に楽しんでもらいたい」という思いはありますか?
小島 / 「世界遺産は身近なもの」と感じていただきたいです。たとえば「ウィーンの歴史地区」をご案内する際には、人気TVドラマに登場したことをお話しさせていただきます。
ヨーロッパの遺産は、特にキリスト教と関連する建造物が多いので、日本人にとっては肌感覚では理解しづらいんですよね。でも遺産の背景から見ると、違った視点から楽しめるんです。たとえばフランスの「ロワール渓谷」の「シュノンソー城」は、カトリーヌ・ド・メディシスなど、6代にわたる女城主の城です。「6人の奥方の城」という別名もあるんです。女の葛藤あり、ロマンスもあり……。ドラマチックですよね。
井上 / 世界遺産はさまざまな切り口で楽しめます。音楽が好きな人は音楽から入ってもいいし、建築に関心がある方はそこからでもいい。興味のある分野から楽しんでいただければ、と思います。
――世界遺産スペシャリストになられてから、仕事やプライベートの旅行で、新しい喜びや発見はありましたか?
小島/仕事ではお客様に一歩踏み込んだ説明をすることができるようになりました。「世界遺産」がきっかけとなり、お客様との会話が弾むのが楽しいです。
井上/私は「世界の多様さ」というものを知ることができたのが、大きな収穫だと思っています。たとえば世界遺産というと、過去の宗教的建造物だったり、古代王国の遺跡だったり、普通に生活している方にとっては、ちょっと遠いイメージがありますよね。でも実際は現在も「生活の場」として生き続けている遺産がたくさんあるんです。キノコ状のキュートな屋根の住居群「アルベロベッロのトゥルッリ」もそうですね。身近な視点から「異文化」というものを感じられるんです。もちろん自然遺産もありますし、世界遺産を学んでいると世界は本当に多様さに満ちている、まだ見ぬ驚きに満ちていると実感します。
小島/それを旅行業に携わる者として、ほんの一部でもお客様にご提供して共有できることに改めて喜びを感じますね。
――今、注目している世界遺産は?
小島/多様さという意味では、モロッコの世界遺産がオススメです。「ヴォルビリスの考古遺跡」のようなローマ時代の遺跡があったり「ミクナースの旧市街」のようなイスラム都市があったり東西文化の交差点ならではの雰囲気を楽しめます。
井上/私は「ラスコー洞窟」で有名な「ヴェゼール渓谷の装飾洞窟と先史遺跡」など、先史文明の遺跡に興味があります。また自然遺産にも関心が出てきていて、アメリカの「イエローストーン国立公園」、新たに登録された「小笠原諸島」にも魅力を感じています。
小島/日本の世界遺産でいうと「姫路城」は、ぜひ今訪れてほしいと思っています。現在修理が行われており、普段は見られない内部の構造なども見られる貴重な期間ですから。
井上/それは面白そう!遺産の保全について考える、いいきっかけにもなりそうですね。